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作成年月:2023年02月

内容

聖女として召喚された主人公、結城美里(ユウキミサト)
聖女として信頼され絆され異世界の平和のために頑張るも、聖女扱いは肩がこる
そして何より、チヤホヤしてくれるけど手を出さないイケメン達に悶々

聖女を「襲わない」契約をしたインキュバス
女殺しの異名を持つも聖女相手だと自制していた傭兵
少し子供っぽいけれど、とても素直で良いつけを聞く獣人

思い切って会話中でさり気なく元の世界では恋愛経験ある一般人であることをアピールした途端みんな目の色が変わって…

上記内容の冒頭部分を書かせていただきました。
好きシチュだったので、とても楽しかったです。
実績公開用に一部抜粋しています。
全公開はこちら:https://syosetu.org/novel/309736/1.html

◇◆◇

「ユウキ。そろそろ着くけど、気分はどうだ?」
 うつらうつらとしていた意識が、耳心地の良い穏やかな声で呼び起こされる。そのまま甘えてしまいたくなる、無条件に安心感を与える低い声は馴染みのあるものだ。馬車の振動に誘われて、いつの間にかうとうとしていたらしい。
「すみません。大丈夫です」
「……ミサ、本当?」
 心配そうに覗き込むナギの青い瞳に、どきりとした。タンザナイトみたいな鮮やかで美しい色合いにじっと見つめられると、なんだか心の中まで全て見透かされてしまいそうでさりげなくそっと目をそらした。
「本当に大丈夫。少し、眠かっただけですよ」
 ふわりと、潮の香りが鼻腔を擽る。どこか懐かしいような香りに、こちらの世界でも海はやっぱりしょっぱいんだろうな、と思った。
 やがて、目的地に着いた馬車が緩やかに動きを止める。
 馬車の扉を開き、私に向かって美しい男が手を差し伸べた。端正なだけではなく、どこか危うい雰囲気を纏っている人は、金の瞳を煌めかせている。
「おいで、ミサト」
「一人で降りれるんだけど……」
「僕、御者してたんだよ。ミサトと離れて頑張ってたんだからご褒美くれてもいいっしょ?」
 私の手を取って、無邪気に笑うからつられて笑ってしまった。
「私をエスコートすることって、ご褒美になるかな?」
「なるよ! 僕にとってはね」
「リュシアン、ずるい……ナギだって、さっきまで走らせてたっ」
 そういえば最初に隣に座っていたのはリュシアンで、ナギは前の席に座していた。ここに来るまで、持ち回りで御者をこなしていたのだろう。ちらりとジェイクを見ると、困った奴らだとでも言いたげな表情を浮かべて、けれど何も口にしなかった。
 恭しく手を取られて馬車を降りて、目の前の光景に息を飲む。
「綺麗……」
 凪いだ海と澄んだ空の境がくっきりと映しだされている。
 澄み切った青が徐々に赤みを帯びて、黄昏時の柔らかな光へとその色を変えていた。海の色が橙に光る中、時折波間が揺れてきらきらと銀が走るのは魚の群れがいるからだろうか。 
 オーシャンビューで有名なホテルに泊まったことはあるし、海が綺麗だと言われている海岸を歩いたこともあるけれど、これだけ透明度の高い海を見るのは初めてだ。
「ユウキ、すまないが少し歩いてもらう」
「ここからはあまり道がよくないから、馬車だとちょっとね」
 申し訳なさそうなアルベルトの言葉に、リュシアンが重ねる。
 リュシアンが取った手と別の手を、ナギにぎゅっと握られた。
「疲れたら、言って。ナギがミサを運ぶ」
 拗ねた声が少し愛おしい。ふたりと手を繋ぐような形で、先に立つジェイクの後ろをついて歩いた。
 五分ほど歩いただろうか。少し気後れしそうなくらい豪奢な建物が現れる。近付くにつれ、漏れてくる音楽や騒ぐ人の声が耳に届いた。思った以上に明るく楽しそうな雰囲気にわくわくする。
「正直、聖女様にはどうかと思うが、俺達が普段行くような店に行ってみたいってご所望だったからな」
「……ダメでした?」
「いや、そんなことはない。庶民の生活を知っておきたいんだろう? 素晴らしい心がけだと思う」
 アルベルトからしてみると嫌味でも何でもないセリフだろうけど、私にとっては重くのしかかる言葉だ。
 聖女様……そう呼ばれるようになったのは、ここ一年程のことだ。その前の私は、単なる一般庶民でしかない。大仰な呼び方は性に合わなかった。
 自室で眠っていたはずなのに突然見知らぬ場所で目覚め、あなたこそが聖女と祭り上げられた日を思い出す。よくよく話を聞けば、あなたは聖女なのだと告げられた。異世界から聖女を召喚することに成功したと言うのだ。何を馬鹿なと一蹴したいのは山々だけれど、目にした景色や多彩な人種、科学と相反する魔術を示されて、納得するしかなかった。
 幸いにも……というべきか。すぐに私が持つ聖女の力が目覚め、下にも置かない扱いを受けている。けれど、自分たちの都合で異世界から人間を攫うことに、何の疑問も抱かない人たちだ。私という道具が、もしも聖女としての力に目覚めていなかったらと思うとぞっとする。だからこそ、巨大な猫をかぶって過ごしていた。
 自分で言うのもなんだけど、私は清楚で可憐な見た目をしている。庇護欲をそそる見た目だということを、充分意識して味方を増やしながら、聖女としての仕事に邁進してきた。
 仕事ぶりが評価されて、しばらくの休暇が認められた。私の味方の中でも、信頼できると見定めた相手だけを連れてやってきたのがこの場所だ。
 アルベルトは、腕の立つ傭兵だ。まだ私が海のものとも山のものともつかぬ時、万が一があれば始末することも含めて依頼を受けたという。なぜそれを私が知っているかといえば、初日にふたりで過ごした時、あっさりそう告げられたからだ。どうして教えてくれたのか問えば、無理やり連れてこられた貴方がもし誰かに危険を及ぼしたとして、それはむしろ正当な行為だろうと言われた。
 リュシアンは淫魔という種族で、護衛としてだけではなく、淫魔として培ってきた手練手管で、私の心をこの世界に帰属させるため遣わされたらしい。聖女の力を失う可能性を考え純潔を奪うことは許されず、危害が及びかねない行為はしないと約束しているらしい。触れずとも、確かに甘く囁かれたら心を奪われそうな容姿だ。でも、口説くなら普通に口説きたいからと早々にネタバラシされた。あの時は口説いてくれることを期待しつつ、純潔じゃないんだよねぇと思ったりもした。
 ナギは狼の獣人。彼だけは、聖女として冒険をしているときに出会った相手で、国や教会の息がかかっていない。元々、酷い怪我をしていたところを見つけて、治したのがはじまりだ。そのことを恩義と感じているのか、とてもなついてくれた。獣人の里で育ったという彼は、人間の世界や言葉に疎く、どこか子供っぽくて、格好良いのにとても可愛い。私に傅いて、ミサを守ると強く誓った凛々しい姿を、今も覚えている。
 この三人が、絶対に信じることができる私の味方だ。
 私の休息に付き合わせてしまう申し訳なさはあったけれど、ついてきてくれるか尋ねるとみんな了承してくれた。

作成者情報

えもとともえ

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